ケニアのカクマ難民キャンプで、難民の若者たちの夢を支えるサッカー
サッカーは、カクマ難民キャンプの若者たちにとって生活の一部です。サッカーのおかげで、アブディラフマンくんのような難民の少年たちが才能を発揮して夢を追うことができています
公開日 : 2024-04-22
カクマ難民キャンプ(ケニア)2024年4月5日 ― ケニア北西部のカクマ難民キャンプにある砂が舞うサッカー場に長い影が落ち、太陽が地平線に向かって沈んでいく中、ひとりの選手アブディラフマン・シェウナくんが目立つのは、彼が繰り出すボールを使った巧みなフェイントやターンだけではなく、他の選手よりもひときわ小さいからです。
まだ14歳のアブディラフマンくんが年上の子や青年たちと肩を並べて共に戦うと決意していることは美しいゲームへの彼の野心と熱意を表しています。彼の足は乾いたデコボコの地面を優雅に動き回り、砂埃を巻き上げディフェンダーを翻弄します。コーチは誇らしげに彼に親指を立てました。
彼はUNHCRとトゥルカナ郡政府が主催した厳しい学校対抗戦に向けて、トレーニングをしています。この大会は「カクマ・学校対抗サッカー大会」と名づけられ、先日閉幕したアフリカネイションズカップ(AFCON)と同時開催されました。
「同世代の子どもたちとプレーしているときは挑戦しているように感じないし、年上の選手たちとプレーすることで多くの技術を得ることができています」とアブディラフマンくんは説明しました。
ケニアに住む27万5000人の難民の大半は若者が占めており、サッカーは最も人気のある娯楽です。サッカーはキャンプの一部となり、カクマには男女合わせて26のプロチームと数百のアマチュアチームがあり、若者たちが才能を発揮し夢を追い求めるための貴重な機会を提供しています。
「同年代の子たちとプレーしているときは、やりがいを感じないんです」
アブディラフマン・シェウナくん
アブディラフマンくんは2010年にカクマで生まれました。両親と兄姉がソマリアの紛争を逃れて国境を越え、ケニアに渡ってからわずか2年後のことでした。
「カクマはいいところです。戦争もなく、穏やかです」とアブディラフマンくんは言います。「もし幸運にもカクマを離れて遠く離れた他の場所に行くことができたら、たくさんのことを恋しく思うでしょう。」
長時間のトレーニングの後、アブディラフマンくんはチームメイトと一緒に家族の家に向かって歩きながら、それぞれの将来への希望を語り合います。
「カクマでは、みんな夢を持っています。すごいサッカー選手になって別の場所へ行きたいという子もいれば、すごいミュージシャンになりたいという子もいます。でも…自分の才能を示す機会がないのです。」
サッカーはアブディラフマンくの人生の大切な一部となり、彼が暮らすキャンプ内の多様なコミュニティーの中で、異なる文化や背景を持つ選手たちを結びつける力となっています。
「カクマではスポーツによる成果の長い歴史があり、UNHCRはスポーツが保護の重要なツールであると理解しています」と、のニコラス・カブラブリョ カクマ准事務所代表は言います。「このキャンプでは、サッカーが難民に帰属意識を持たせて自信を高め、故郷を離れていても希望をもたらす源になっています。私たちは難民コミュニティやパートナー団体と協力をして、スポーツ活動の充実を図っていきます。」
アブディラフマンくんの父シェウナ・ハマディ・フセインさんは、少年時代にはサッカー選手で、自身の息子が怖いものしらずだと自宅で語ります。
「私も以前は6番のユニフォームを着てプレーしていたのです」と、彼は言います。
「でも、彼は私よりうまいし、足も速い。年上の選手たちは、彼から恥をかかされることがあるため、時々彼を倒そうとします。でも彼は同年代の子たちとプレーするのは好きではなく、上の年齢の人たちとプレーすることを好みます。」
「アブディラフマンがいつか、サッカーを通じて彼の人生や私たちの人生を変えてくれることを私は願っています」とシェウナさんは言いました。
アブディラフマンくんの才能と意欲にも関わらず、プロのサッカー選手になるという彼の夢は、難民キャンプで多くの困難に直面します。適切な用具はなく、キャンプ人口が増加して多くのピッチが使用できなくなったため、プレーするスペースも不足しています。
「ボール、ユニフォーム、その他たくさんのものを僕たちは持っていません。それでも、僕たちはトレーニングのために使えるものは何でも使っています」と彼は言いました。
大会当日、アブディラフマンくんのチームは14歳以下の男子枠に出場しましたが、1回戦で地元ケニアのポコトム小学校のチームに敗れました。
アブディラフマンくんはこの敗北を素直に受け止め、この経験をさらなるモチベーションにつなげ、先日のAFCON準々決勝でセネガル代表が開催国のコートジボワールに敗れたときのヒーロー、サディオ・マネ選手からインスピレーションを受けました。
「点を入れずに試合を終えるのは嫌なので、戻ってもっと練習するように自分に言い聞かせています」と、彼は言います。「サンディオ・マネ選手のようになるのが夢なんです。彼は経験豊富で強いですし、サッカーをするときは自分を信じています。」
学校にもどると、アブディラフマンくんは大会に参加したメダルを誇らしげに掲げ、学校の友達にピッチでの活躍を詳しく話しました。
「サッカーをしているときは、とても気分がいいし、有名になったように感じます。試合の中で自分が一番だと感じます。」
Samuel Otieno and Kathryn Porteous
原文はこちら(英文)
Football keeps young refugees' dreams alive in Kenya’s Kakuma camp
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