スーダンで何が起こっているのか?
スーダンでの激しい戦闘により、難民や国内避難民、そして民間人の生命、安全が危険にさらされています
公開日 : 2023-04-26
日本でも報道されているように、2023年4月アフリカのスーダンで激しい戦闘がぼっ発。今現在も多くの民間人が危機にさらされ、多くの人々が国内外で避難を強いられています。 スーダンが置かれた現状、そしてUNHCRの救援活動について、お伝えします。
1. スーダンで何が起こっているのか?

2023年4月15日、首都ハルツームでスーダン軍(SAF: Sudanese Armed Forces)と準軍事組織である即応支援部隊(RSF: Rapid Support Forces)の間で激しい戦闘がぼっ発。RSFは、かつてスーダンのダルフール地方で活動していたジャンジャウィードという民兵組織から発展したスーダンの独立系軍事組織です。2021年の軍事クーデター以降、軍政から民政への移行を目指した協議に参加しています。
なお、戦闘は北部メロウェでも報告されており、その後もハルツームや西部のダルフールでも攻撃が続いています。
最初の1週間で数百人の死者、数千人の負傷者の他、世界食糧計画(WFP)の職員3名、国際移住機関(IOM)の職員1名の命が奪われました。
また、今回の戦闘により国内のみならず、国外へ避難する人も急増しています。2023年7月現在、スーダン国内外で避難を強いられている人の数は300万人を突破。240万人以上が国内避難民となり、65万9000人以上が難民として国外に逃れています。19万人以上が隣国チャドへ避難を強いられ、さらに、現地からの報告によると、25万5000人以上がスーダン―エジプト国境を渡り、16万8000人以上が南スーダンに逃れています。南スーダンに逃れた人の多くは、主にスーダンから南スーダンへ逃れていた難民で、再び避難を強いられた帰還民となります。チャド、南スーダンに逃れた人の大多数は女性か子どもで、水、食料、シェルター、医療、そして子どもの保護が急務です。
そしてUNHCRは、約86万人がスーダンを追われ、難民等として近隣諸国に避難を強いられる可能性があると想定しています。
動画:スーダン緊急事態「武力衝突が激化しています」
※動画内の避難者数等は2023年4月時点の数値です
2. スーダンはどんな国?
スーダンはアフリカにおいて最も多くの難民を受け入れてきた国の1つです。エチオピアやエリトリア、南スーダン等からの難民100万人以上を受け入れる一方、特に西部のダルフールと中部のコルドファンでは長く続く紛争によって多くの人々が国内で避難を強いられ、スーダンでは今回の戦闘以前から約80万人が国外で、約370万人が国内で避難を強いられていました。
加えて、紛争以外にも、洪水等の自然災害、疾病の発生、経済の悪化といった恒常的な危機にさらされています。スーダンは以前から人道支援へのニーズが非常に高く、今回の対立によってさらに事態は最悪しています。
フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、「現地のUNHCRチームは、近隣諸国、特にチャドでスーダンから新たに到着した人々の支援を開始しました。スーダンでの戦闘が続き、民間人が避難を強いられているため、私たちはパートナー団体や受入政府と緊密に連携し、さらなる難民の受け入れ準備を行っています」とSNSで訴えています。
3. 人々が置かれた状況
国連機関によると、スーダンでは、今回の戦闘以前から人口の3分の1、約1580万人が人道支援を必要としています。スーダン国内における不安定な政情、深刻な社会経済状況により避難を強いられている人々に人道支援が急務です。
今回の戦闘激化により、首都ハルツーム等から国境を越えて避難する人々の他、スーダンに逃れていた南スーダン難民が母国への帰還を強いられる事態も発生しています。
加えて、国連機関の推計によると、今回の戦闘激化によるスーダンの国内避難民の数は、5月1日の33万4000人から5月9日には約73万6000人と、2倍以上に増加しています。
多くの人々が家を追われている一方、特にハルツームとその周辺地域では、食料、水、医薬品、燃料の不足が深刻化。一部の地域では基本的な物資の価格が急騰し、燃料や交通費の高騰により、人々が戦闘地域を離れることがますます困難になっています。
また、白ナイル等の難民キャンプ、南/西コルドファンの難民居住地では、今も援助活動が継続されていますが、戦闘部隊の移動が確認されて緊張が高まっている、との報告もあります。そんな中、危機発生以来、スーダンにいる数万人の難民がハルツームを離れ、白ナイルの難民キャンプ等に安全を求めて再び命がけで逃れて来ている、という報告を受けています。難民は一部の援助団体の活動停止が発表されたことに不安を示しており、UNHCRは可能な限り、援助を継続する方法を模索しています。
4. UNHCRの対応

UNHCRは、この危機のすべての当事者が難民や避難を強いられる人々を含む民間人を保護し、重要な援助を届けることができるように、人道支援職員の安全を尊重することを求めています。
スーダンには4月20日現在、計481名のUNHCR職員が滞在しています。ハルツームとダルフールのUNHCR事務所にも流れ弾、迫撃砲等の被害が及んでおり、援助活動が妨げられています。その他の場所では、在宅勤務や移動の制限など、注意事項を守りながら活動を継続。UNHCRはスーダンと域内にとどまり、必要に応じて支援活動を実施しています。
スーダンの各事務所では、難民のコミュニティ・リーダー等と連絡を取り合っており、難民へできる限りのカウンセリングやサポートを続行しています。
加えて、UNHCRの各国事務所は、受け入れ側の政府やパートナー団体と協力し、以下のような緊急時対応計画の見直しや更新、国境のモニタリング等を実施しています。
①すでに数万人が逃れてきている隣国チャド、エジプト、エチオピア、中央アフリカ等で、新たに逃れて来るスーダン難民の保護
②スーダンが受け入れた難民の帰還
③スーダンが受け入れた難民の二次移動(南スーダン難民のエチオピアへの移動等)
さらに、UNHCRは人々の安全を守るため、以下を訴えています。
①人道的支援へのアクセスを認め、負傷した民間人の避難を可能にすること
②重要なインフラ、特に水道と電気の復旧に緊急に取り組み、民間人がこれらのサービスを受けられるようにすること
③外交官と人道関係者の安全を守り、すべての交通手段(特にハルツーム国際空港)の再開を確保すること
スーダンに注目が集まる中、その情勢のみならず、スーダンの民間人や戦闘から逃れる人々、また、度重なる避難を強いられ、スーダンから帰還を強いられる人々へも関心を寄せていただけませんでしょうか?
UNHCRはスーダンの人々を支援するため、他の国連機関と共に引き続きスーダンに滞在し、安全にアクセスできる場所であればどこでも活動を続け、可能な限り迅速にスーダンのあらゆる地域で保護・救援活動を拡大していきます。
UNHCRは今、各国政府やパートナー団体と協力して、スーダンの戦闘から国内または近隣諸国へ逃れる可能性がある約86万人へ向け、救援活動の準備を進めています。
暴力の激化は、援助を必要としている国中の人々への人道支援対応を妨げ、この地域で避難を強いられている数百万人のための安定と解決策を遅らせることになります。UNHCRは、難民や避難を強いられる民間人を保護し、重要な援助を届けることができるように最善を尽くします。暴力・迫害から逃れる人々を守り、支えていくUNHCRの活動を、どうぞご支援ください。
原文はこちら(英文)
Sudan Situation - UNHCR External Update #1 等
※5月1、8、15日、7月15日、避難者数等、一部更新しています
スーダン緊急事態 戦闘激化により難民急増
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