国境を越えて平和を求める、避難を強いられた南スーダンの人々

長引く紛争と気候がもたらす危機に直面し、南スーダンの国内外で避難を強いられる人々は、共に紛争の終結を訴えます

公開日 : 2023-04-03

南スーダン/コンゴ民主共和国、2023年3月16日 ― サウィブ・ラシディさんとジョキノ・オトン・オドクさんは2人とも、安全を求めて南スーダンの故郷から逃れました。しかし、母国の紛争が始まって10年、隣国コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)に逃れたサウィブさんも、南スーダン国内の国連避難サイトに逃れたジョキノさんも、安全な帰還は依然として困難なままです。

彼らだけではありません。南スーダンの難民危機は依然としてアフリカ最大のもので、230万人が難民として近隣諸国で暮らし、さらに220万人が国内避難民となっています。この国は引き続き内戦、執拗な民族紛争、そして最近では気候変動の壊滅的な影響に苦しんでおり、数百万人が援助を必要とし、難民の持続可能な帰還が困難となっています

サウィブ・ラシディさん
2016年に南スーダンから逃れてコンゴのイトゥリ州に住み、地元のイマーム(指導者)、そして難民コミュニティのリーダーとして活動するサウィブ・ラシディさん

2016年の避難の混乱の中、サウィブさんはコンゴに逃れた際に家族と離れ離れになり、ある者はウガンダで、ある者はコンゴで安全を見出しました。彼は現在、コンゴのイトゥリ州にあるビリンギ・サイトで、妻と5人の子どもたちと一緒に暮らしています。

そこで彼は、地元のイマーム(指導者)として、難民コミュニティのリーダーとして活動しています。ビリンギの南スーダン人コミュニティでは、異なる背景や信条を持つ人々がうまく融合しています。それは、彼が母国の南スーダンでもいずれ実現したいと考えていることです。

「私は南スーダン出身のムスリム・コミュニティのリーダーですが、ここコンゴでは、コンゴのムスリムと同じ空間で一緒に祈っています。同様に、私のコミュニティのクリスチャンは、地元のクリスチャンと一緒に祈り、みんなで一つの市場を共有しています」とサウィブさんは言います。

「第一に、人々は平和を必要としています」

コンゴでは避難を余儀なくされた人々に門戸を開くという強固な伝統がありますが、この国では依然として高いレベルの情勢不安と大規模な暴力が民間人に影響を与え続け、多くの人々が深刻なリスクにさらされている状況です。この国は南スーダン難民を受け入れる一方、国内避難民580万人を抱える、アフリカ大陸最大の国内避難民の状況に取り組んでいます。

コンゴに逃れる南スーダン難民の多くはイトゥリ州に住んでいますが、ここ数か月、この地域自体の暴力が著しく激化しています。周期的に起こる暴力の波により、州全体では、1度だけではなく、2度、3度、4度と家族は避難を余儀なくされており、国境地帯で続く暴力により、難民は安全を求めて繰り返し避難しています。その一方、受け入れコミュニティでは、長引く紛争の圧力に耐えかねて、リソースが枯渇しています。

「第一に、人々は平和を必要としています。私たちは皆、南スーダンの戦闘から逃れてきましたが、今、イトゥリでの戦闘が私たちのところに近づいてきています」とサウィブさんは語ります。「私たちは、殺人や攻撃のニュースを耳にします。私たちの背景からすると、それは多くの恐怖を与えるのです。」

一方、国境を挟んだ南スーダンでは、民族間の緊張が再び高まり、大洪水や資源の争奪に拍車がかかり、10州のうち8州で新たな国内避難が発生しています。

2013年に“危機”と呼ばれる事態が始まる前、ジョキノさんはマラカルのカトリック教区に勤務し、教会を基盤とした団体の一員としてコミュニティに奉仕していました。現在は、元の家からわずか数キロメートル離れた、国連平和維持軍によって保護されている国連避難サイトである、南スーダン上ナイル州のマラカル民間人保護サイトで、家族8人と小さな部屋をシェアして暮らしています。民族間の対立が根強いため、自宅から近いにもかかわらず、彼はいまだに家に帰ることができません。

ジョキノ・オトン・オドクさん
マラカル民間人保護サイトに10年間住むジョキノ・オトン・オドクさん。マラカル町の家に戻りたいが、そこには保護がないと語る

「私たちは民間人保護サイトでの中で生きることにうんざりしています」とジョキノさんは言います。マラカルの町には私たちの家がありますが、他人が占拠しているため、今は住めません。そして、そこでは私たちは守ってもらえませんから」と彼は語ります。「私たちは、世界の一般的な市民と同じように自由に生きたいのです。」

上ナイル州では再び紛争がぼっ発し、すでに深刻な過密状態にあるマラカル民間人保護サイトに多くの人々が続々と到着しています。スペース上の制約から、新たな到着者はキャンプ内の学校で暮らすことを余儀なくされ、子どもたちの教育が中断されています。これは、住民たちが抱える多くの問題の一つです。

「なぜうちの子たちは違うのでしょうか?」とジョキノさんは問います。「私の願いは、平和、そして安全です。私たちが自由に生活でき、子どもたちが教育を受け、世界の他の子どもたちと同じように暮らせるようになることです。」

「私たちはこの国を愛したいのです」

国境を越え、ジョキノさんとサウィブさんは未来への同じような希望を語っています。彼らは教育や生計について語り、自分たちの持っているスキルを自身のコミュニティのサポートや国づくりに活かしたいという願望を語っています。サウィブさんは「私たちのコミュニティで教育を受けている人々でさえ、仕事を見つけるのに苦労しています」と説明し、紛争によってあらゆる世代の未来が阻害されているとの見方を示します。「戦争でなく平和であれば、(故郷に)帰って、彼らのスキルを使って国を発展させることができるのです。」

ジョキノさんも同じように感じています。「私たちは配られるもの、他人の善意で生きています…でも、より良い人生を送る志を持った人間は、こんな生き方はしたくないのです。」

2月21日、UNHCRは人道、開発、市民社会の関係者を含むパートナー108団体と共に、2023年地域難民対応計画を発表し、コンゴ、エチオピア、ケニアに住む220万人以上の南スーダン難民と庇護希望者に命を守る援助と保護を提供するために、13億米ドルが必要であることを訴えました。

そして何より、2人とも自国に平和が戻ることを望んでいます。「必要なのは、平和な南スーダンです。南スーダン人全員が生活を楽しむことができ、この国を憎む必要がなくなるように」とサウィブさんは言います。「私たちはこの国を愛したいのです。」

Charlotte Hallqvist in South Sudan and Joel Smith in the Democratic Republic of the Congo

原文はこちら(英文)
Across borders, South Sudan's displaced call for peace


南スーダン 暴力に引き裂かれる家族

南スーダン危機は、世界で最も急速に深刻化している人道危機の一つです。市民への暴力に加え、深刻な食料不足で人々は食べるものすらなく、数百万人が難民・庇護希望者となり、避難を強いられています。

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