2022年の6月から8月にかけて、パキスタンでは集中豪雨や河川の氾濫、鉄砲水などが重なり、ここ10年で最悪の大規模な洪水に見舞われました。
あれからまもなく1年、住む場所や家財を失いさらなる苦しみにさらされているアフガン難民、そして受け入れコミュニティに対し、UNHCRは引き続き援助活動を展開しています。
今年もモンスーンの季節が近づき、再び大洪水の発生が心配されている中、改めてこの記録的洪水の被害状況をお伝えします。
パキスタン洪水(2022年)被災状況
同国では、国境を接するアフガニスタンからの約132万人にのぼる難民が避難生活を送っています。その6割以上にあたる約80万人が今回の洪水の被災地区にいました。被災したアフガン難民 約80万人の大半は、わずか4つの地区(ペシャーワル/ノウシェラ/クエッタ/カラチ)にいました。
すべて流されて――洪水に襲われたケシギ難民村を訪ねて
2022年8月27日早朝、パキスタンの北西部ハイバル・パフトゥンハー州を洪水が襲い、同地で避難生活を送るアフガン難民も深刻な被害を受けました。
最も被害が大きかった地域のひとつが、約8万人のアフガン難民が避難生活を送るノウシェラ郡でした。
UNHCRパキスタンのアフリディ広報官は洪水の4日後の8月31日から9月1日にかけてノウシェラ郡ケシギ難民村の被災状況を取材しました。
【ケシギ難民村】瓦礫の間で遊んでいるアフガン難民の子どもたち
「あの晩のことは忘れられません あっという間に水浸しになりました」
8/31(水)
UNHCRパキスタンのアフリディ広報官は洪水の4日後にケシギ難民村に到着。アフガン難民のバハドゥル・カーンさん(60歳)と出会いました。
バハドゥルさんは1990年代初頭にアフガニスタンからパキスタンに避難。以来、家族と共にノウシェラ郡ケシギ難民村で避難生活を送ってきました。
バハドゥルさんは家畜の放牧で生計を立てながら、長老としてケシギ難民村の難民たちをまとめています。
2022年6月、モンスーンによる集中豪雨が始まりました。バハドゥルさん一家はなんとかしのぎ続けました。
しかし8月27日早朝、近くのカブール川が急激に増水。水は堤防を突き破り、バハドゥルさんの家が流されるまでわずか10分。バハドゥルさんは家族を高台に避難させるだけで精一杯でした。
アフリディ広報官に洪水の被害状況を説明するアフガン難民バハドゥルさん
相談するバハドゥルさんたちとアフリディ広報官
パシュトゥーン人の伝統的家畜「ミミナガヤギ」を連れるバハドゥルさん
緊急支援として配布された毛布を受け取った男の子
「アフガニスタンからの避難、2010年の洪水、そして今回の洪水。3度すべてを失いました」
9/1(木)
翌日もアフリディ広報官はバハドゥルさんに話をききました。
「洪水当日、私たち一家は避難した高台で野宿をせざるを得ませんでした」とバハドゥルさん。
そして洪水翌日、ケシギ難民村にUNHCR職員が到着。バハドゥルさん一家はシェルターを受け取って、ようやく雨風をしのげる場所で身体を休められました。
「シェルターや蚊帳がすごくありがたかったです。しかし私たちは他にも多くの問題に直面しています。清潔な飲料水、医療施設もありません。食べ物も満足に入手できず、家族を養うのに苦労しています」
様々な悩みが尽きない中、バハドゥルさんがとりわけ心配していたのは、一族の11人の子どもたちの教育が止まってしまっていることでした。
壊滅的に家々が流されたケシギ難民村
現地に届いたシェルターを配布するUNHCR職員たち
援助物資を家族のもとに持ち帰ったバハドゥルさん
ケシギ村の難民たちが必死に避難させた「ミミナガヤギ」
パキスタンの状況が悪化している今、アフガン難民への支援はきびしい状況です。
今年もパキスタンにモンスーンの季節が近づいています。難民の状況が大変心配されます。
皆様からお預かりするご支援は、そのとき世界で最優先の難民援助活動に充てられます。
パキスタンのアフガン難民支援は、2023年UNHCRの最優先の援助活動のひとつです。
お力添えのご検討をどうぞよろしくお願いいたします。
あなたのUNHCRへのご支援は
今も苦境に耐えているアフガン難民を
支える大きな力になります
【バロチスタン州】 UNHCRのソーラーランタンを受け取った ニュー・サラナン難民村に暮らすアフガン難民の親子
たとえば アフガン難民家族に光を届ける「ソーラーランタン」3万円で5家族に提供できます。
◎防災時に力を発揮すると共に、暗闇の危険から女性や子どもを守り、子どもの学習にも役立ちます。
◎重さ:約700g ◎電池寿命:5~7年
※1米ドル=144円換算