【1】難民キャンプで避難生活を送る人々
「料理を売って生活しています」
スーダン難民ハワさんの場合 (エチオピア/クルムク一時滞在センター)


スーダン難民のハワさん(40歳)2023年6月、子ども達と80歳の母親とともにスーダンの暴力から逃れ、エチオピアに避難しました。

クルムクの一時滞在センターには2万人以上の難民、帰還民、庇護希望者が、避難生活を送っています。ハワさん一家が暮らすシェルターは脆弱で雨風や太陽の光から殆ど守ってはくれません。
「できれば1日に2回食事したいのですが、食べるものがないときはお茶を飲んで空腹をしのいでいます」

「私はファラフェル注1を作って売ることで収入を得ています。お金が入れば、食料のほかに子ども達のための石けんを買います。でも、まだ衣服や靴、薬を買うには足りません」
[注1]ファラフェル:前菜のひとつで、ひよこ豆とそらまめのパテを揚げたもの

「戦争が終わることを願っています。子ども達が十分な教育と医療を受けられる安全な環境で暮らせるように」
「食料不足に苦しんでいます」
ソマリア難民サミラさんの場合 (エチオピア/メルカディダ難民キャンプ)


ソマリア難民のサミラ・アブディさん(28歳)は11年前紛争によってソマリア南部の故郷を追われ、エチオピアのメルカディダ難民キャンプに避難しました。サミラさんは今新たな困難に直面しています。

2019年以降、アフリカの角(エチオピア、ケニア、ソマリア、ジブリ)では5年連続で壊滅的な干ばつが発生。この地域の何百万人もの人々が影響を受けています。水源は枯渇し、作物や家畜は壊滅的な打撃を受け、仕事をしたくても人々の自活能力は蝕まれています。

さらに、ウクライナ戦争の影響もあって食料価格が高騰、難民や地域社会の大半にとっては、生活必需品を買うことすらままならない状態が続いています。
「食料がなくて子ども達は食べていません。どんどん痩せてきたのに気づいたので、ここに助けを求めに来ました」

サミラさんは1か月前にも5人の子ども全員を連れて難民キャンプの栄養センターを訪れました。子ども達は栄養失調と診断され高栄養サプリメントの投与と感染症の治療を受けましたが、回復したのは子ども達のうち3人だけでした。
サミラさんは子ども達が何週間も腹痛に苦しんだ後、栄養センターにふたたび子ども達を連れてきました。
「どうやって食べさせようか、そればかり考えています。昨夜は食べませんでした。今朝はおかゆを少しあげただけ。もう与えるものは何もありません」
【2】難民キャンプを支える援助活動
UNHCRは受入国政府、他の国連機関、人道支援組織、地元のパートナー団体と連携しながら難民キャンプ・国内避難民キャンプに様々な支援を提供しています。キャンプで実施されている援助活動の一部をご紹介します。
核となる援助活動

難民の参加を確保する
難民キャンプの運営に難民が参加することは、全住民・スタッフの心身の健康、安全に寄与し、キャンプ運営を改善し、保護と支援の水準を高めます。
【エチオピア/ミルカーン居住区】 この居住区のソマリア難民の代表に選ばれたアフマドさん(30歳)、ジャマルさん(40歳)、エマンさん(21歳)が紹介されている様子。
調整する
調整を通してキャンプ内の様々なニーズや不足箇所が特定され、難民の参加が促進され、人権の順守にもつながります。
情報管理を行う
正確で信頼できるアップデートされた情報に基づいた情報管理があってこそ、キャンプにおいて調整された効果的な援助活動が可能となります。
環境対策を行う
キャンプの設置場所を選ぶ前に、まず環境アセスメントを行なう必要があります。そしてキャンプ及び周辺の自然資源は効果的かつ持続可能な形で管理する必要があります。
安全な環境を作る
保護する
キャンプにおける保護には人権侵害を予防する様々な意思決定が含まれており、説明責任や対応能力を考慮し、かつ適切なモニタリング、照会、報告を伴わなければなりません。
登録・プロファイリング
登録とプロファイリングは、キャンプの住民のデータを系統的に収集するプロセス。両方とも個人の特定に役立ち、その結果、ニーズに応えて権利を守ることにつながります。

リスクの高い人への対応
キャンプの住民の中にはリスクの高い人がいます。適切な支援と保護を提供するために全ての利害関係者がそのニーズを把握する必要があります。
【ルワンダ/マハマ難民キャンプ】 ブルンジ難民のマルクさん(82歳)が段差を昇るのを手伝っている同じブルンジ難民のコンスタンティンさん。
ジェンダーに基づく暴力(GBV)への対応
GBVの効果的な予防と対応には、対象者が直面するリスクとその原因を、包括的に理解することが不可欠。スタッフは、リスクの高い場所のモニタリングや安全性に関する監査を定期的に行わなければなりません。
治安維持/防災訓練
キャンプにおいて考えられる安全上の脅威としては、軽犯罪や自然災害や武力紛争などが挙げられますが、安全対策を立てる際には、住民とスタッフが直面し得る脅威がそれぞれに異なることを考慮しなければなりません。
避難生活を支える

シェルター支援
シェルターは身体の安全、健康、プライバシー、尊厳にまつわる住民の権利を保障する手段であり、保護の重要な要素です。
【エチオピア/アレムワッハ難民居住地】 UNHCRの提供したシェルターで避難生活を送るエリトリア難民エマンさん一家。
健康と栄養
死者、病人、障がい者の数を減らし、生活の質の向上に貢献することがキャンプにおける医療支援の主な目標です。

教育
キャンプ管理局は、避難している子どもや若者が地元の学校に通えるよう交渉するか、キャンプ内で教育プログラムを提供しなければなりません。
【マラウイ/ドザレカ難民キャンプ】 キャンプ内の小学校で授業前に水を集める生徒たち。
食料支援
キャンプの住民が十分かつ適切な食料と食料以外の支援を受け取れるようにしなくてはなりません。

水と衛生
緊急事態の初期段階における死亡率は、最大で40%が下痢性疾患によるもの。従って「水と衛生」に関する支援はキャンプで提供される最も重要かつ最優先するべき支援のひとつです。
【チャド/ゴズ・アミール難民キャンプ】給水所で水をくむスーダン難民女性。
自立支援
キャンプの枠組みにおいては避難民への支援の最初の段階から、生計手段に関する考慮(市場の近さ、収入源としての可能性、原材料の入手、家畜を飼うスペースの有無など)が必要です。住民に自立機会を提供することは保護の手段です。
コラム1 難民キャンプは「最終手段」

難民キャンプとは、難民が避難先として居住し、政府や人道支援機関から支援を提供される目的を持って計画・建設・管理された場所、または自然発生的な定住地を指します。
キャンプには「計画されたキャンプ(planned camp)」「自主的なキャンプ(self-settled camp)」「居住区(settlements)」あるいは「集合センター(collective centers)」のような施設も含まれます。
キャンプの特徴は様々な権利や自由がある程度制限されてしまうということです。移動の自由、住居や職業を決める、事業を始める、土地を耕す、保護や支援を受ける…といった人生にとって大切な選択をすることがしばしば難しくなります。
避難先としてキャンプに代わる選択肢を追求することは、難民がより尊厳をもって、自立し、コミュニティの一員として普通に暮らせるようにすること、様々な制限を撤廃する努力をすることです。
難民キャンプは他に選択肢のないときの「最終手段」です。一方、紛争や自然災害によって故郷を追われた人々に一時的に支援と保護を提供するための唯一の選択肢である場合もあります。
キャンプでの定住を決定する前に他のすべての支援の選択肢を検討すべきであるとUNHCRは考えています。
コラム2 ソーラー照明が難民を守る

キャンプでは、さまざまな目的で共同照明が必要とされ、設置されます。
照明は、夜間の施設の使い勝手を向上させ、悪意のある人や野生動物からの防犯効果もあります。
共有スペースに照明がないとジェンダーに基づく暴力のリスクも高まります。
そのため、可能な限り、衛生施設、出入り口、主要な交差点、道路や通路、キャンプ事務所、医療センターなどの主要な場所には照明を設置すべきとされています。

家庭レベルでは、個人用の携帯型照明(ソーラーランタンなど)が提供されることが多くあります。携帯用照明にはさまざまな用途があり、ジェンダーに基づく暴力のリスク軽減にも役立ちます。
エネルギー問題を鑑み、現在UNHCRはソーラー街灯、ソーラーランタンなどの使用を推進しています。
あなたのUNHCRへのご支援は難民キャンプの人々を支える力になります

たとえば エチオピアの難民キャンプを照らす「ソーラー街灯」
9万円で1基 設置できます
たとえば 「ソーラーランタン」
3万円で6家族に提供できます
※1米ドル=149円換算